第4講「貿易と環境 WTOからTPPへ―国際分業は資源の最適利用か―」(神野直彦先生)講義報告

7期塾第1部の最終講義は、財政学に社会学を加えた「財政社会学」の創造を志す、地方財政審議会会長、神野直彦東大名誉教授が「貿易と環境 WTOからTPPへ―国際貿易は資源の最適利用か―」の課題で講義した。神野名誉教授は環境の破壊構造を明快に説き、アメリカ発新自由主義経済の論理を実証により批判、聴講者をうならせる痛烈なアイロニーとユーモアを交えた講義・質疑は1時間50分に及んだ。

本来ならば三位一体であるはずの国家・市場・共同体から成る社会構造が、現在の市場経済の社会では分離させられ、旧来の社会制度が「歴史の峠」としての危機(crisis)に直面し、崩壊し始めている。自由貿易の前提である土地、労働、資本の流動性のうち、資本の過剰な流動が危機の背景にある。

従ってグローバリゼーションの本質もまた、(1)生産物のボーダレス化としての自由貿易ではなく、(2)生産要素のボーダレスに伴う、(3)資本統制の崩壊にあると指摘。公共財としての環境と天然資源が、あたかも自由財であるかの如く浪費されていく構造が論証された。

この状況を克服する方法として、①地域と市民個人が「知識社会」を指向するボトム・アップにより、新たな社会ルールと規制―グローカリゼーションを指向する。②知識生産を支える知的能力と社会資本の充実による「量」の経済から「質」の経済への置き換え、など幾つかの手段を神野名誉教授は提案した。

教授は米経済学者レスター・サロ―氏が著書で日本に対し、「ルールが変わったという事実に最後に気付くのは前のルールでの勝利者だ」と指摘していることに注意をうながした。ただし、日本ではすでに人的環境や自然環境が破壊され過ぎて、立て直す意欲と方策を見失っている、とも指摘。本来の意味でのソサエティー(社会)で、新しい社会ルールを築いていくパラダイム(思考の枠組み)の変革が歴史的な必然である、と強調した。

 

 

塾生の評・知の木々舎代表 横幕玲子さん

神野先生の講義は財政学とは無縁の私にも大変に興味深いものでした。危機の地球にあって、今世界が注目しているのが、オーランド紛争を解決した日本人の知恵であるというお話、クラーク博士の残した言葉(注)は胸をうちます。けれど、有史以前から、文明は自滅することで地球の危機を救ってきたというのはなんというアイロニー。それこそ人類の宿命というべきなので しょうか。

「今」がそのときでないにしても、個体 が増えすぎたあげくひたすら破滅へ向かうレミングの伝説を想像したのは私一人でしょうか。

 

塾長の評

地球温暖化の政府間会議を思わせます。焼けたトタン屋根の上のネコの集会さながらの。

 

(注)クラーク博士の言葉

Boys,be ambitious, not for money, not for selfish accomplishment, not for that evanescent thing which men call fame.

金のためではなく、利己的な功績のためではなく、人が名声と呼ぶあのはかないもののためでもなく、少年よ大志を抱け。(神野名誉教授の講義テキストから)

 

※神野教授は(not以下)を除くと日本社会の実情が見えると指摘、教室は爆笑につぐ爆笑でした。

 

 

 

 

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